皮膚に色を加えて、簡単に落ちないメイクに仕上げるアートメイク。落ちないメイクなんて、永遠に毎日のお化粧をしなくてすむの?と、興味を持つ方も多いかもしれません。しかしアートメイクは、1回の施術では綺麗に色が定着しないことをご存知ですか?
まず皆さんに知っておいて欲しいことは「アートメイクは消えるもの」であるということです。
アートメイクで色素を入れる場所は皮膚のごく浅い「表皮」の部分。1回目の施術では、肌のターンオーバーによって平均1か月ほど持ち、2回目以降で定着しても1~3年で薄くなっていくのが正常です。
とくに1回目のアートメイクは落ちやすいと聞いて、「せっかく施術するのに?」と心配になる方もいるかもしれませんね。
- アートメイクが1回で定着しない理由
- 2回目を受けるタイミング
- 完成したアートメイクを少しでも長持ちさせる方法
この記事では疑問を持つ方の多い、上記について解説していきますので、参考にしてみてください。
アートメイクの1回目が消えやすい理由
基本的に1回目のアートメイクは消えるもの、と考えておくと間違いがありません。傷ついた皮膚の再生は3~4日で始まり、1週間ほどで完成します。ここまでで残る色素は平均6割。個人差はありますが抜けやすい方で3割ほどしか残らないケースもみられます。これには2つの原因があります。
皮膚の性質上、1回目は消えやすい
アートメイクが1回で定着しにくい理由は、肌のターンオーバーにあります。ターンオーバーとは古い皮膚が剥がれ落ちて、新しい皮膚が生まれる周期のことです。肌の新陳代謝であり、健康な肌であれば約4週間で新しい肌に生まれ変わります。
アートメイクの色素を入れる場所は4つある表皮の種類のうち、一番深い「基底層」です。正常な肌の状態ならば、色素を入れた場所が押し上げられ、およそ4週間で浅い部分まで出てきて剥がれ落ちていくという仕組みです。
また、人の身体には体内に入ってきた異物を外に押し出そうとする性質があります。これを防御反応といいますが、肌も同じです。そのため初めて体内に入る色素も、異物と認識し通常より早く排出しようという力が働きます。
施術上「細い?薄い?」が起こりやすい
もう一つの理由には、施術上の特性があります。現代のアートメイクは基本的に消えていくように工夫されているものですが、それでも一度入れると形が欠けたり、にじんだりしながらも、完全に消えるまでに1~2年以上はかかります。その間、色素は染みて広がりどんどん太くなっていきますので、それを見越した施術が必要になるのです。
アートメイクの施術には以下の特徴があります。
- 薄いものは濃くできるが、濃いものは薄くできない
- 明るい色を暗くできるが、暗い色を明るくできない
- 細いものは書き足して太くできるが、太いものを細くできない
そのため、とくに1回目の施術では、後で微調整ができるよう希望の仕上がりよりも1段階だけ「薄く、明るく、細く」減算して施術します。(アートメイクの学校でもそのように指導します)そのため1回目は薄かった、消えやすかった、と感じる方もいるかもしれません。
アートメイクでは失敗を避けるために最初の施術で薄く細く作ります。1回目は物足りなく感じるぐらいの方が、2回目でなりたいデザインに仕上がります。
アートメイクって「一生もの」じゃないの?
かつてはアートメイクを長持ちさせようと、肌の真皮層近くまで針を入れる方法がありました。長い間消えないようにする施術ですが、その方法は多くのトラブルを生んだのです。
- 深く入れすぎて時がたつにつれ、にじんで大きくなってしまった
- 必要以上に傷が深くなり、痛みが長引いた
そのため現在では、皮膚の浅い場所に施術をし、時間がたてば消えていき、補正が可能な仕上がりにすることが重要視されています。定期的にリタッチしながら、理想の状態を維持していくのが、アートメイクの基本です。
※「古いアートメイク修正」の症例画像
アートメイクの1回目はどのくらいで消える?
個人差はありますが、1回目のアートメイクでは、最初の1週間で残るのは平均6割程度。個人差はありますが、なかには3割くらいしか残らない方もいます。
とくに消えやすい順番をつけるならば、アイライン→リップ→眉の順になります。アイラインがもっとも消えやすい理由としては、瞬きをするため、他の部位に比べて摩擦が起きやすいことによるものです。どの部位も施術からおよそ1週間程度で色落ちが始まるものと考えていいでしょう。その後、肌のターンオーバーで1か月後にはかなり薄くなっていきます。
アートメイクは絶対2回必要?1回じゃダメ?
アートメイクを1回で終わらせたいと考える方もいますが、ある程度の期間色素を残し、美しい仕上がりを維持するためには2回以上の施術が必要になります。
- 色を綺麗に定着させる
- デザインを微調整してイメージ通りの仕上がりにする
- 変色や色が薄いなどの色ムラをなくす
- アートメイクの綺麗な状態を長く保つ
1回目は、どうしても形が欠けてくるなど定着しにくいものです。複数回の施術で理想のデザインに仕上がっていくため、アートメイクは2回以上受けることを推奨しています。
アートメイクの2回目はいつから受けられる?
アートメイクの2回目は、1回目の施術の直後には受けられません。ダウンタイムを経て、肌が回復してから2回目を実施します。1回目から30〜40日前後で来院して2回目を受けるのが一般的です。
これは眉、アイライン、リップ、部位によらず同様で、1か月以上経過してから肌の状態を確認しながら行います。
2回目のアートメイクは何年持つ?
1回目のアートラインは1週間ほどで色素が薄くなりますが、2回の施術をした場合はどのくらい持続させられるのでしょうか。ここでは、部位ごとに2回目のアートメイクの持続についてご紹介します。もちろん、個人差はありますので参考程度にしてください。
眉のアートメイクは何年持つ?
眉は半年〜1年半ほど持ちます。ただし、3Dや4Dなど施術内容によって持続期間は異なります。
3Dで施術した場合:6か月~1年半程度
4Dで施術した場合:1年~2年
※3D、4Dなど眉のアートメイクの種類について、詳細は以下のページをご覧ください
医療アートメイク
アイラインのアートメイクは何年持つ?
アイラインは約2年持ちます。眉と同様、表皮に色素を入れますが、瞼の皮膚は薄く、眉とは構造が違うため、真皮層まで色素が入りやすい特徴があります。色素が自然な形で皮膚の深くまで入ることで、持続期間が眉よりも長くなります。
リップのアートメイクは何年持つ?
リップの持続期間は2〜3年程度です。アイライン同様、リップも皮膚が薄い構造になっているため。表皮に入れた色素が真皮層近くまで入っていくことが多いため、平均して持続期間が長くなります。
アートメイクを長持ちさせるコツは?
アートメイクはやがて消えるのが正常な状態です。色素の持ちにも個人差があるものですが、それでも通常2年ほど持つはずのものが、6か月しか持たないというような場合はケアの方法などに問題があるかもしれません。
過度にアートメイクの退色を進めてしまわないように長持ちさせるコツは主に4つあります。
- 一定期間濡らさない
- 術後のケアを念入りにする
- ターンオーバーの周期を無理に早めようとしない
- クリニック選び
どのようなことに気をつければいいのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。
アートメイクは何日濡らさないのが基本?濡らすと消える?
1週間は濡らさないでほしい、と定めるクリニックもありますが、当院では24時間は施術部位を濡らさないように過ごしてもらうことをお願いしています。
施術後、何日も洗わないで過ごすことにより、皮脂を溜め込んで油分が溜まります。油分が増えると、色素が皮脂と一緒に剥がれ落ちてしまい、長持ちが難しくなってしまうのです。
そのため、当院では施術後24時間は濡らさずそのままで過ごし、翌日から水洗いや処方する薬で施術部位を清潔に保っていただいています。
また油分や水分に触れる機会が多いと色素は外に出やすくなるため、せめて皮膚の治癒が完成するまでの1週間は、オイルクレンジングや、水に触れる機会の多い環境におくことを避けましょう。
ダウンタイム中のケアは入念に
ダウンタイムは施術部位によって異なります。
眉のダウンタイム:ほとんどなし
眉のアートメイクには、とくに目立ったダウンタイムはありません。半日から1日程度は、赤みが出ることもありますが、腫れや内出血はほとんど起こりません。眉アートメイクの施術後は、その後の色抜けを計算して仕上がりの眉の色が濃くなります。次第に馴染んで薄くなっていくため、色の濃さもダウンタイムに含む場合は2〜3日程度と考えてよいでしょう。
アイラインのダウンタイム:2~3日
眉と比較すると少し腫れやすい傾向があります。
リップのダウンタイム:1~2週間
施術後1~2日、腫れることが多くあります。乾燥や皮むけが1〜2週間ほどあり、他の部位に比べダウンタイムが長いのが特徴です。
ダウンタイムの期間について、クリニック側から受ける注意事項をよく守りましょう。
- 施術部分を清潔にする:ゴシゴシ洗わず浸出液(傷表面から出る液)を優しく洗い流すようにする
- 保湿を心がける:1週間程度の塗り薬を処方されるので使用してしっかり潤いを与える
ターンオーバーの周期を無理に早めない
きれいな肌を保つためには、ターンオーバーの促進が大切です。しかし、アートメイクではターンオーバーが早いほど色素の落ちは早くなります。
ターンオーバーは新しい表皮に生まれ変わるための周期です。そのためアートメイクの色素を入れても、表皮が剥がれ落ちてしまうと、色素も一緒に落ちていきます。理論としては、ターンオーバーの周期が遅い方がアートメイクは長持ちするといえるでしょう。
ターンオーバーを早めて肌を整える方法に「ピーリング」があります。少なからず皮膚に刺激を与えますので、皮膚の回復とアートメイクの持続を考えると、施術後は最低2週間・平均1ヶ月間はピーリングの使用を控えていただくようになります。
アートメイクの直後には無理にターンオーバーを早めるアプローチはせず、皮膚が回復し色素が落ち着くのを待ちましょう。
長持ちは技術力に左右される!臨床経験豊富なクリニックを選ぶ
施術や技術によってアートメイクの持ちは変わってきます。
アートメイクは表皮の0.3ミリや0.4ミリといった浅すぎず深すぎずの場所に色素を入れていくもの。このとき、ちょうど良い場所であればきれいな線を引けますが、深く入れすぎると線がヨレて見た目の悪い仕上がりになります。
一方、浅すぎる場所に色素を入れるとターンオーバーによってすぐに色素が落ちてしまい、アートメイクが長持ちしきません。
ちょうど良い場所は一人ひとり異なるものです。その方の肌質を見て皮膚の厚さを確認し、適切な場所に色素を入れる技術は臨床経験が大きく左右します。多くの肌パターンを知る経験豊かなクリニックを選びましょう。
またクリニックを選ぶ際には、症例写真をチェックするといいでしょう。症例写真から自分の理想に近い症例があるかどうかも大切なチェックポイントになりますよ。
丁寧なケアと信頼できるクリニック選びがアートメイク長持ちの秘訣
アートメイクは毎朝のメイクが簡単で時間を節約できる、すっぴんの自分にも自信を持てるなど、嬉しいメリットがたくさんあります。
せっかくのアートメイクが、平均より早く消えてしまわないように、施術後の丁寧なケアを行いましょう。
クリニックの実績として、公開されている症例写真を確認しておくのも大切です。イメージするデザインと合致しそうか、臨床経験の豊富なクリニックか、などの判断材料となるでしょう。事前にチェックし、自分にぴったりなクリニックを見つけましょう。
【この記事の監修者情報】 OWLWROW代表 ・看護師歴24年 略歴 ・2018年~現在まで延べ約10,000人の患者さまの施術に関わる 資格 コメント |